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問題に沿って基礎から教えていくと2人は少しずつ理解を示すようになっていった。 簡単な問題であればこの1時間でやったことを忘れなければ解けるだろう。 「そういえば、克昭。最近、三和さんと一緒にいないけど、もしかして別れた?」 「ああ、別れた。」 あんなに仲良かったのに、簡単に終わってしまうのか。 恋人になると終わりがあるのなら、幼馴染という今の関係のほうがいいといえるのだろうか。 それでも苦しいことに変わりはなく、俺のほうがこのまま近くにいることは出来ないと思ってしまう。 やっぱり幼馴染であってもどっちかが恋愛感情を持った時点で、ダメなら関係は簡単に崩れてしまうのだ。 「蘭華、土日も勉強教えてくれ。このままじゃ俺大学受かる気しない。」 自分の勉強は夜でも出来るから大丈夫だろうと克昭に頷いた。 「2人は同じ大学行くんだよな?克昭、大学行ってからも霧留に勉強教わるのかよ。」 「別にいいだろ。家隣なんだし、同じとこ行くなら問題ない。」 俺は否定も肯定もしないでただ2人の会話を聞きながら笑顔を顔に貼り付けていた。 克昭が俺と同じ大学に行けるはずはないのだ。 英語で日常会話が成り立つ場所に行く気もないなら、学力でさえ偏差値に届いていない。
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