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克昭はここの所ずっと蘭華に距離を感じていたけれど、今こうして同じ空間で追試の勉強だとしても穏やかな空気で居られることに安堵する。 追試まで約2週間だけど蘭華と同じ大学に行くためにはこんなところで躓いてはいけないと克昭は思う。 頑張る克昭の姿を視界の端に映した蘭華は頑張れと心の中で言った。 1時間はあっという間に過ぎて片付けて帰る準備をする。 3人で歩いて行くと昇降口でひとり待つ女の子がいた。 「高里先輩。少し時間いいですか?」 「ああ、いいよ。蘭華、宗佑先行ってて。」 またか・・・ズキリと胸が痛むのを気づかない振りをして芳村と歩いて行く。 「俺さ、克昭が好きでもない子と付き合う意味が全くわからないんだよね。あいつ中学もあんなだったの?」 「中学の時はあんなじゃなかったね。高校入ってからだよ。」 ため息をつきながら言った俺に呆れていると思ったのか芳村は克昭がいるだろう方を向いて同じくため息をついた。 きっと克昭はあの子と付き合うのだろう。 土日も勉強をすると言っていた克昭だけれど、もしかしたらデートに変更してしまうかもしれない。 それなら俺は壱那のところに行くだけだと寂しそうに俯いた壱那を思い出した。
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