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一緒に風呂に入りながら全くこっちを見ない壱那を後ろから抱きしめた。
「壱那、ごめんな。俺、自分のことばっかで。壱那も辛いんじゃないのか?」
壱那は蘭華の体温を背後で感じながら、言われた言葉の意味を考えた。
もしかしたら気づいているのかもしれない。
俺はわかりやすいと言われたことがある。
「蘭華、もしかして・・・気づいてたの?」
「さっき、もしかしたらって思った。ずっと気づかなくてごめん。俺、壱那をいっぱい傷つけたよな?」
辛く苦しいはずの愛する人に気遣わせてしまったと壱那は落ち込んでいく。
それでも、辛いという思いより、身体だけでも繋げることが出来た喜びのほうが大きかった。
「これは俺が望んだことだから、気にしないで。でも、友達やめるとか言わないでよ?」
「俺、壱那に言ってなかったことがあるんだ。俺、大学、アメリカに行く。まだ親と学校側しか知らないから、誰にも言わないで。」
突然の蘭華からの言葉に壱那は動けなくなった。
今更自分の進路を変更することは可能だろうか。
無理ならば留学をしてでも蘭華に会いに行きたい。
でも、黙っていたということは蘭華は俺がアメリカまで行くことを望んでいないということだろう。
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