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「もう起きて大丈夫なのか?」
「今のとこはね。せっかくだし、わからないとこあるって昨日言ってたから、何か教えようか?」
蘭華の言葉に嬉しくなった克昭は自分の勉強道具を取ってくると言って出て行った。
「結局、こうなるんだな・・・。」
玄関のドアを見つめたまま呟いた蘭華の声は克昭に届くことはない。
どうせすぐに戻ってくるんだろうと思った蘭華は自分の部屋に戻った。
今しか克昭とは一緒に居られないのなら、きっと思い出にするために出来るだけ一緒にいるべきなのかもしれない。
いい恋をしたと胸を張っていられるように、限られた人にしか言えない恋でも、克昭を好きになってよかったと思いたい。
きっと壱那のおかげで気持ちに余裕ができているのだと思うと、感謝の気持ちでいっぱいになった。
戻ってきた克昭とテーブルに向き合って座り、わからないと言ってきたところをひとつひとつ教えていく。
大学受かるといいな、と心の中で呟いて、切ないながらも愛する人との時間を大切にしようと思った。
お昼も夕食も克昭と一緒に食べて、久しぶりにこうして一緒にいることに蘭華は嬉しさがこみ上げていることに気づく。
叶わないとわかっていても、ずっと一緒に居られないと知っていても、大切な人には変わりはない。
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