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それより俺が入試で落ちるわけにはいかない。
受からなければ留年するという話になっているのだ。
「蘭華と一緒にするなよ。追試の時だけでいいからお前の頭脳貸してくれ・・・。」
こいつはいったい何を言っているんだか・・・。
出来ることなら貸してやりたいなんて思ってしまう俺もどうかと思う。
惚れた弱みってやつだろうなと思いながら、ため息だけついて克昭の隣を歩いていた。
家に入ると母さんが帰っていて、夕食を作ってくれている姿が見えて、ダイニングのドアを開けてただいまと声をかける。
「あ、蘭華、ちょっと待って。夕食の時、携帯のことと家のこと話あるから。」
「うん、わかった。荷物おいて着替えたら降りてくるよ。」
どうするのか気になっていたこともあって、知ることが出来るのは嬉しいけれど、もうすぐ克昭とは離れるんだと思ったら急に寂しくなった。
自分で離れると決めたはずなのに、いざ実感する頃になると戻りたくなる自分が情けなくなる。
この気持ちだけでもなくなれば、また何かのきっかけで会うことがあるなら、その時は幼馴染として、友達としての関係が築いていけるんだと自分に言い聞かせる。
せめて克昭への恋愛感情がなくなるまでは・・・。
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