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「…さむ」
口癖のようにそう呟くと、煙のような白い息が現れた。
呼吸をするたびに漏れる白い息吹が、厳しい寒さを物語る。
マサチューセッツ州ボストン。
その郊外から約一時間離れた築30年のボロアパートを目指して、地面に広がる果てしない雪の道を早足で歩いて行く。
地下鉄から徒歩20分。
あまりいい条件ではない交通アクセス。
不便そうにみえるが、慣れてしまえばどうでもいい。
アパートの門をくぐると、思い出したようにポストに手をかけた。
大量に重ねられたチラシ類にうんざりしながらそれらを適当に捌いていく。
開放式の階段、氷のように冷たい風は痛いほど肌に染みた。
すぐにドアを開けると、風が通り抜けるのを許さないというようにドアに鍵をかけた。
凍えるような冷たい風を遮断させたというのに、白い息もつられて再び現れた。
それほど、十二月のボストンは鋭く寒い。
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