貫いた嘘と真実④ 

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風呂から上がると、あらかじめ電源を入れておいたヒーターの前へ足を進めた。 しばらく身体を温めた後、重たい腰を起こして狭いキッチンへと向かった。 節約のために始めた自炊。 ここへ来て覚えた料理は、数年も経てば手際よくできるものだ。 一間のボロアパートに冴えない食事。 留学生に余裕なんてないから当たり前だけど、この日常化した生活も悪くないと思える。 今の俺にはこの生活が丁度いい。 むしろ、似合っている。 郊外から遠く離れた場所を選んだのは、単純に、緑溢れる閑静な住宅街を気に入ったから。 大学まで往復約二時間の通学。 冬の日は凍え死にそうな寒さが襲ったけれど、今ではそれも懐かしい思い出のひとつとなった。
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