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炎に包まれた骸骨のモンスターに勝利したハヤト達は一息つくと再び山道を歩み始めた。もっとゆっくり休んで戦闘の疲れを取りたい反面、日の明るい内に山頂を越え山を下らなければいけない。
突然、周囲の気配に人一番敏感であるはずのボブでさえ全く気がつかない内に目の前に一人の男があらわれた。
咄嗟に皆の頭の中に山賊かもしれないという思いがよぎり身構えた。
その顎に白い髭を蓄えた老年の男性は山登りをしに来たような格好で背中には篭を背負っている。男は何も持っていないことを見せるように手を広げて敵対心がないことを伝えている。
「私はこの山を越えた麓にある宿屋を営んでいる者です。山菜を採るのに夢中になっていたらこんなところまで来ちゃいました。皆さんの戦い振りをしかとこの目で拝見致しました。あの骸骨には困っていたものです。倒して頂いて感謝しております。」
男は慌てているようにも見えるがハヤト達の警戒心を解きほぐすかのようにどこか大人の余裕を感じさせるような落ち着いた口調で言った。
モンスターが跋扈する地域で宿屋を営む者の多くは結界師の能力を持つ。
ボブでさえ見抜けない程気配を消すことができるのは、モンスターを忌避させる結界を生み出すことができる結界師の持つ能力の応用的なものだと考えることでハヤト達は納得することができた。
ハヤト達が攻撃態勢を緩めたのを見ると安心したのか男は饒舌に語り出した。
「良ければ私と一緒に山を越えて麓まで行きませんか?私といれば山賊が襲ってくることはありませんし、モンスターと出くわさない道も知っています。」
ハヤト達はしばしその場で話し合った結果、一緒に山道を共にすることにした。簡単な自己紹介をし、元々宿泊するつもりであることやセブンハマーへ行くことなど他愛のない話をしながら山を登って行く。
話し好きなのか宿屋の主人も慣れた語り口で話題は尽きない。山賊が襲って来ないのは自分の宿屋がなくなれば旅人が減るからだとか、以前はセブンハマーにたくさんいる結界師を束ねるような立場だった等、確かめようのない自分自身の調子の良い話が多い。
ハヤト達は楽しく話を聞きながら歩いていると山頂までの到着があっという間に感じられた。
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