第九章 宿主からの依頼

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 宿屋の主人は山頂の見晴らしの良いところへ案内してくれた。崖の切り立った場所に立ち上がるとキヨメガワと、反対側のセブンハマーの両方の景色が見渡せるようになっていた。  キヨメガワの方へ目をやるとYの字になっている河川の中心に小さくなった建物が立ち並んでいる。Y字の左奥の方に木々が生い茂っているのがキコナンの森で右奥の草原のどこかにはハヤトの家族が暮らしている集落がある。  一方、振り返ってセブンハマーの方面へ目を向けるとなだらかな坂を下った先には真っすぐ大きな道が伸びている。遥か先の左奥の方には海が見える。その海の手前にはキヨメガワとは比べようがないほどのたくさんの建物が密集している。この辺りで一番大きな街がセブンハマーである。  そして右側の遥か向こうの方には高い壁に囲まれている建物が微かに見える。かつてこの地域一帯を統治していたリュウネクストの施設がそこにある。  ゾーイやボブ達も山頂からの景色を興味ありげに眺めている。ジェリースライムのアマモも目を輝かせ感嘆の声を上げた。  皆が一通り風景を堪能して落ち着いた頃を見計らって宿屋の主人は今までの朗らかな感じとは違う真面目なトーンで話し始めた。  「もし良かったらでいいんだけどね。この先の、とある場所には我々結界師が使う魔法石の原料となる鉱石が採れる場所がある。ほとんどはもう昔に掘り尽くされてしまったんだがこの前偶然その辺りを通りかかったら結構な大きさの、そうだなそこに連れて歩いている魔物くらいの大きさの原石が道に落ちてたんだよ。」  宿屋の主人はボブの脇にいるアマモを指差して言った。  「これはすごいなと思って。お金がどうのというよりは結界師でないと伝わりにくい感情なんだけど可能性を秘めた石になりそうな予感がしたんだ。気になって拾おうと思って近づいたら全身が灰色の石でできたようなモンスターがあらわれたんで、わしは咄嗟に気配を消して様子を見ることにした。そしたらモンスターの身体が箱みたいに開いて、そこに鉱石を収納すると両脇に石の車輪が2つ付いててそれがぐるぐる回転して移動していったんだ。」  宿屋の主人は車輪を両手で回すような仕草さをして話を続けた。
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