第十章 調査団の報告会

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 「これが今回、最後の報告になります。これは先程のリュウネクストの創設者であるリュウの手記に書かれていた件の補足になります。そこに書かれていたリュウの能力とは自分の物の考えや価値観などを他者に同調させて操ることができる能力だということです。そのこと自体は我々だけでなく多くの人々が詳細を知らなくてもなんとなくわかっていることです。残念ながらその方法論は書かれてはいませんでしたが、当人が自らその能力を有していたことを著したという点においても貴重な資料だということができるでしょう。この、心を同調させる能力とはモンスターに設定したプログラムを書き換える能力を持つ魔物使いに類似するものではないかと考えております。可能であるならば世界中の魔物使いを集めて心を同調させる能力について調査を行っていきたいと思っています。これは私だけの意見ではなく調査団の総意です。今回の報告は以上です。ご清聴ありがとうございました。」  会場を拍手の音が包み込みピタっと止んだ。女性が元いた場所へ戻ると二人の男性が立ち上がり、三人の調査団は総司教の方へ揃って一礼すると会場から立ち去っていった。  法衣の男が再び遠くへ声をかけるように首を少し突き出して言った。  「以上で調査団の報告会は終了とする。が、ここで総司教様より御指示を賜ったので聞いて欲しい。エリアぐぉの、フン!エリア5の大司教聞こえるか。噛んだのはわしだ。総司教様ではないぞ。」  法衣を着た男が顔を赤くし興奮気味に話していると会場のどこからからか「はい。」という返事が聞こえた。  「お主は大司教でありながらも魔物使いの能力を有しているそうだな。この件も調査団をエリア5に派遣するので協力を惜しまぬようにとのこと。あと、話は変わるが…、ここからは総司教様ではなくわしの話じゃ、この前エリア5で採取された魔法石は非常に優れた性質を持っており、新たなモンスターを製造することができるようになるそうだ。引き続き魔法石の採掘を続けて欲しい。以上。解散!」  法衣の男が話し終えると再び会場から「承知しました。」の声がした。会場に詰めかけた教団の者たちは物音を立てずに奇麗に整列し静かに出て行った。  法衣を着た男は階段を上りヴェールの中へと入っていった。  広間には誰もいなくなり天国の華々しい世界観と無邪気に微笑む天使たちの静止した瞬間だけが残されていた。
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