第十章 調査団の報告会

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 台座の前に立っている法衣の男が声を出すと、辺りに音響の設備は見当たらないが声が拡張されて大きく響き渡った。男は自分の耳で自らの反響した声を確かめると慣れた様子でその具合の良いところを判断して話し始めた。  「これより、調査団の報告会を始めるとする。調査団は前へ。」  すると会場の脇から周りの者と同じ薄い灰色の衣服を着ている男二人と女一人があらわれて法衣を着ている男よりも一段と低いところに膝をついて座った。法衣を着た男が続けて言った。  「遂に我々リュウネクスト教団の悲願の一つであった調査が実現しました。大規模な地殻変動に遭遇し、そのほとんどが海底へと埋没してしまったという政治政党リュウネクストの本部のあった場所です。そこへ至るまでには幾多にも上る困難な問題を一つ一つ地道に根気強く解決していく必要がありました。その歴史はまさにその地殻変動によって我々の権威が失墜した時より創始されたリュウネクスト教団とともに始まりました。それまでリュウネクストの創設者であるリュウを最後に一人の代表者を決めずに、序列のない10人の大幹部を一括りにして組織の長としていた慣習を抜本的に改めることになりました。今もこちらにいらっしゃる総司教制度はその時から始まりました。」  男が階段上のヴェールに包まれている方を向き、恭しく頭を下げると会場は大きな拍手に包まれた。拍手は同じタイミングでピタッと鳴り止んだ。  「総司教様はリュウの名を名乗ることを許された唯一の存在です。最初の総司教はリュウ一世と呼ばれ、以後継承される度に数を刻んでいくこととなりました。リュウ一世は聖都モヘンジ跡を調査するため、それまで文化遺産として展示されているだけだった船の修復と改良を指示され現地への調査に使用し得る堅牢な船が完成しました。リュウ二世の代ではその調査船を動かす燃料を得るため地下資源を探し出し掘り当てることに成功しました。それは船のみならずその後の我々の活動にも多大なる恩恵をもたらせました。リュウ三世の時代には聖都モヘンジ跡へ船で行くために最適なエサージュ半島を実行支配していた豪族から戦さによって取り戻し、港の建設と整備が成されました。そして遂にリュウ四世の御指示により調査が開始されたのです。では君たちの誰かから調査結果を報告しなさい。」
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