第十章 調査団の報告会

4/9
前へ
/9ページ
次へ
 法衣を着た男がキョロキョロと首を振り、調査団の三人に目配せしながら言った。  一人は長身で鍛え上げられた肉体を持つ黒人男性、もう一人は小柄で肥満気味な黄色人種の男性、女性は色白で若く未成年者のような風貌をしていた。背の高い方の男性がスッと片手を上げると法衣を着た男に手招きされて横に並んで立った。  「あ。あ。よろしいですか。」  背の高い男も声を発し自分の声が拡大されて会場に届いているのを確認すると話し始めた。  「私たち調査団は様々な役割を分担して活動しています。私は調査船に乗り現地に赴きました。地理や気象現象などの知識を持っています。現地では海に潜って調査することもありました。様々なデータを取得して、戻ってからも研究を続けました。その結果、あの地殻変動に関する重大な見解を得て、確信するに至りました。それは、あの壊滅的な地殻変動は自然発生的な事象ではなかったということです。海に埋没したところは地層の種類に関係なく不自然に分断されたような形跡がありました。本来ならあの辺りの一帯が地続きであるので、斑模様のように不規則に埋没したりそのまま残されていたりしている光景は奇妙なものでありました。破壊された時からだいぶ時間が経過しているため現地のデータより推測しましたがこれは科学の範疇を超えた現象であると考えるに至ったのです。古代に使われたとされるミサイルなどの化学兵器でもこのような破壊は起きないと断言できます。あと、これはデータに基づくものではなく、あくまで私の勘に過ぎないことなのでこの場で話すのには相応しくないかもしれないが…。」  長身の男性が言葉を詰まらせると法衣を着た男が言った。  「そういった勘のようなものも参考になる時があるかもしれん。相応しいかどうかはこちらで判断する。思うことがあるなら言ってくれたまえ。」  「では言わせて頂きます。あまりにも規模が大きいため自分でもそれを認めたくはないのですが、これは魔法によるものだと思われます。おそらく幾多ある魔法の中でも可能性があるとすれば時魔法でしょう。時魔導士の中には地殻の活動や重力などの時間を操って地震や災害を起こせる者がいると言い伝えられています。私からの報告は以上です。海底や埋没せず取り残されていた土地では聖都モヘンジで保管されていた資料の一部が発見されました。その件は他の者が詳しいので代わります。」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加