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そう言うと男は一段低い元の場所へ降りて座った。会場には拍手が鳴り響いたが、先程の総司教への拍手を上回ってはいけないという心理からか遠慮がちにすぐに鳴り止んだ。法衣を着た男が言った。
「時魔導士。以前から我々教団と別のところで権威を持ち始め目障りな存在になってきた。しかし総司教様より御指示があるまでは手出ししてはならんぞ。最近何者かによって時魔導士が命を絶たれていると聞く。すぐに疑われるのは我々教団の関係者である。今はまだ力を蓄えるべき時。この中で、もしくはこの放送を見ている他のエリアの大司教の中にそのようなことをしている者がいたとしたら即刻やめて頂きたい。調査の報告だけでなく昨今の懸念していた件についても触れることができた。感謝する。」
法衣を着た男は先程報告していた長身の男の方に目を向けた。長身の男は恭しく頭を垂れた。法衣を着た男が続けて言った。
「それでは次に聖都モヘンジ跡より持ち帰った資料について報告してくれる者はおるかな。」
背の低い肥満気味の男が手を挙げると法衣を着た男の横に立って話し始めた。
「…たし…わ。ゴホン!わ、わ、わー。よし。私は現地に赴いた調査団員たちが持ち帰った資料を解読しました。また、その資料が記された時代の歴史的な背景なども調べ上げ、より正確性の高い調査結果を導くことができたのではないかと自負しております。幾つか発見された資料の中で今回は最も重要だと思われるリュウネクストの創設者リュウ自身による直筆の手記が奇跡的にとても良い保存状態で発見されました。その内容や重要だと思われる部分について報告させて頂きます。」
背の低い男は懐より紙を取り出してそれを見ながら再び話し始めた。
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