第十章 調査団の報告会

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 先程報告を終えた二人の男が法衣を着た男に何やら説明すると、色白の若い女性が前に出て話を始めた。容姿は幼く見え、少女というよりは女の子というほうが相応しい程だった。  「……ま、…ほう、…の」  声が聞き取り辛く、皆が耳を澄ませようとするくらいのタイミングで会場内にキーンという耳障りな音が鳴り響いた。法衣の男が女性の話を遮って話し始めた。  「音声の調整が良くないな。ちょっと声を出してみて。うん。うん。そうそう。それくらいの感じでもう一度最初から話してみて。」  法衣の男に従い女性が「あー。あー。」と発声すると聞き取れるような大きさの声になった。女性は気を取り直して再び冒頭から話を始めた。  「失礼いたしました。では報告させて頂きます。私は上級の魔法使いの認定を頂いております。魔法使いや様々な能力者の観点からの見解を報告させて頂きます。まず、最初の報告にもありましたが聖都モヘンジを壊滅させた地殻変動は時魔法による可能性が高いというのは私も同じ意見です。私は現場を直接見たわけではありませんが、調査団が記録したデータや現地の詳細を描いた絵を見せて頂きました。それによると、先程の斑模様とおっしゃっていた現象、例えるならシマウマの縞のように、海底へ沈んだところと陸地が手付かずで残っているところが交互に見受けられました。私はそれに酷似した現象を別のところで聞いたことがあります。それはかつてエリア10の管轄だった、気づかぬ者を収容していた砂漠の街があったところです。リュウ二世の頃より地下資源に着目した教団は当時作り得る強力なモンスターを幾つも放ち、砂漠を一時的に手中に収めましたが、全て何者かによって討ち滅ぼされ撤退を余儀なくされたといわれております。その頃から砂漠の周辺の街などでは地震の報告が相次いでおります。あの辺りは地学上の観点から見ましても地震が起こりにくい場所なのです。仮に教団が砂漠をおさえたとしても地層の活動が不安定であるならば地下資源の獲得は困難になる可能性がありました。そのため私たちの何世代も前の調査団が荒れ狂う竜巻や、強大なモンスターを討伐したとされる何者かに畏れを抱きながらも勇気を持ってあの辺一帯の地層などを調べ上げていたのです。ん。んふん!」  女性は咳払いをしながら話を続けた。
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