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夕暮れ時の公園。
楓はベンチに腰掛けて、そわそわと辺りを見回している。そろそろ大和が部活を終えてやってくるのだ。
楓が塾に行くまでの時間が二人のデートタイム。
いっぱしの不良を気取っていた大和は、最近素行を改めて、持て余す体力をバスケに費やしている。
もともと抜群の運動神経の持ち主だった大和は、ハードな練習も難なくこなし、 メキメキと頭角を現していると、バスケ部の同級生が言っていた。
体格のいい大和が柔道部からの再三の勧誘を断って、チームプレイであるバスケを選んだのは、 今まで一匹狼と格好をつけて友達を作らなかった自分を反省してのことだ、と楓は聞いている。
人相が悪いのも手伝って、なかなか上手く行かないという愚痴も。
夏の大会が終わったら3年生は引退だから、あとわずかの時間しかないのに、大和は偉い、と楓は思う。
レギュラーになれなくてもいいのだそうだ。
3年間コツコツ頑張ってきたチームメイトを応援する自分を応援しに来て欲しい。そう言って大和は笑う。
楓は、もちろん! と答える。
大和くんが応援するチームを、声を限りに応援するよ。
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