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「ちょうどお茶会をしているところだ。君もおいで。そこでゆっくり語り合おう」
彼が私の背中に手を回してエスコート。こんな夜にお茶会なんて、と思いながらもそれに促されて彼と一緒に薔薇のアーチをくぐった。
「僕は帽子屋。この世界ではハッタ―と呼ばれているよ」
「この世界って……?」
「強いて名前をつけるなら……クルーエルランド。つまりはみんなが狂ってる、ここは素敵な夢の国さ」
案内されたのは庭先にあるガーデンテーブル。
真っ白なクロスがかけられ、その上にはクッキーやマフィン、そしてティーセットが用意されていて……驚いた事に、すでに席には大きなウサギの先客がいる。
(夢……そうだわ、思い出した。昔、お姉ちゃんに読んでもらった【不思議の国のアリス】にこんな場面があった。じゃあここは私の夢の中……?)
幼い頃、ヒロインと自分の名前が同じなのが嬉しくて、三つ年上のお姉ちゃんにせがんで何度も読んでもらった絵本。
その記憶が夢とリンクしてこの世界を創っているのだろう。
「君は、アリスだね?」
ハッターが私の椅子を引きながら目を細める。
「え、どうして知ってるの」
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