18.二度目のサヨナラ

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*** 健と別れた後、特に用事もなかった俺はそのままマンションへ帰ることにした。 乗り気はしなかったけれど、どうしても入社日までには片づけておきたかったから。 都内の新築物件。 ボストン時代の貧乏生活とは大違いだ。 かといって、贅沢な生活はできないけれど。 「終わるのか…?これ」 いや、終わらねぇ。 自嘲するように小さな笑みを浮かべて、そう呟いた。 山のように積まれた段ボールを目にして、盛大なため息が漏れる。 ほとんど処分はしてきたものの、日本で新調した家具類もあるため、整理するのも一苦労なのだ。 …とりあえず、適当に仕分けるか。 こんなことなら、健に手伝ってもらえばよかった、なんて思いながら。 久しぶりの親友との再会は思いのほか嬉しかったのか、余韻に浸る俺は軽快な手つきで段ボールの中身を捌いていく。 だけどその手は、ぴたりと止まった。 段ボールの底にはリングケースに包まれた指輪。 ずっと捨てられなかったのは、捨てたくないという意志があるから。 俺は見ないふりをして、リングケースを手に取ると、無理やり押し入れの奥へ仕舞い込んだ。 自分の気持ちに蓋をするように。
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