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「逆に不利になるのはどっちだろうな?」
鼻で笑ってそう言うと、女たちは顔を青くする。
「す、すみません…。
でも、本当に冗談で、本気でいじめようと思っていた訳じゃ…」
突然泣き出す女を相手に、無表情を貫く。
こんな女がいると思うと、女に対して嫌悪感しか生まれてこない。
昔の俺ならこんな嘘泣きを見抜くことができなかっただろう。
女性が泣いても取り乱さず、その上何も感じないだなんて、非情な男に変わってしまったなと自分でも思う。
あざとい奴らにうんざりしていると、そこで関係のない男性社員が割り込んできた。
俺をよく思ってない奴がいるとは聞いていたが、怒りの感情より簡単に騙されるこの男を見て、逆に同情の念を抱いた。
先輩らしいが関係ない。
男に一喝し、再度三人組に向き直る。
「嘘泣きに騙されると思ったか?
お前らのことだからそれも常習犯なんだろ?
そんなクズは会社の役に立たない。
辞めてしまえ」
社食内はさらに凍りついたけど、そんなことを気にも留めない俺は、何事もなかったように仁野が待つ席へ戻る。
「珍しいな。怜斗が女相手にムキになるの。
むしろ、初めて?」
含み笑いを漏らす仁野をよそに、素知らぬ顔で食事にありつく。
仁野は何かを見透かしたように笑っていたけれど。
これで彼女に危害を加える奴はいないだろう。
もし現れたら、俺が排除するのみだ。
逆に悪目立ちさせて申し訳ないけれど、彼女が少しでも働きやすくなってくれたら、それでいい。
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