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「…論文発表?」
「ああ。うちの研究者たちのな。
毎年、年に一度開催しているのは知っているだろ?
楢崎も薬を扱う部門なんだから、聞いていて損はないと思うぞ?」
時が流れるのは早い。
帰国して三度目の秋。
社会人三年目を迎えていた俺は、相変わらず仕事で埋め尽くされるほど多忙を極めていた。
課長との国内出張。
難なく契約を結び付けた帰りの車内。
今日は久々に早く帰途につくことができると、安堵していると、課長は予期せぬ言葉を口にしたのだ。
「論文発表を一緒に見に行かないか?」と。
うちの会社に所属する各研究センターの研究者たちが公の場で自己の研究論文を披露する。
毎年恒例の一大イベントの一つでもあり、興味がない俺にとってはずっと避けていた行事でもあった。
「ほら、お前も聞いたろ?
今年の新人研究者の一人が米州研修センターに配属されたの。
しかも研究者部門では珍しい女子!
その子も発表するみたいだから結構注目されているらしいよ。
アメリカから一時帰国しているらしいし。
……名前何だっけ…あー、忘れた…」
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