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涙を拭う時間も忘れて、北原くんを見上げた。
「俺…八年前、楢崎に会ったんだ」
「え…?」
楢崎くんに会った…?
「葉瑠が襲われた数日後のことだった。
あいつは大きな花束を抱えて、葉瑠のマンションの前で待っていたんだ。
リングケースを握り締めて、葉瑠の帰りをずっと」
その事実を聞いて、胸が張り裂けそうになった。
「あいつに全てを話した。
葉瑠が嫌がらせに遭っていたこと、楢崎のせいで葉瑠が襲われそうになったことも…。
全部……話した」
「どうして……」
「許せなかった。
葉瑠が苦しんでいるのに、何も知らずに葉瑠との未来を誓おうとするあいつが、どうしても許せなかったんだ…」
拳を作った北原くんの手が小刻みに震えている。
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