19.最終章~再愛~①

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涙を拭う時間も忘れて、北原くんを見上げた。 「俺…八年前、楢崎に会ったんだ」 「え…?」 楢崎くんに会った…? 「葉瑠が襲われた数日後のことだった。 あいつは大きな花束を抱えて、葉瑠のマンションの前で待っていたんだ。 リングケースを握り締めて、葉瑠の帰りをずっと」 その事実を聞いて、胸が張り裂けそうになった。 「あいつに全てを話した。 葉瑠が嫌がらせに遭っていたこと、楢崎のせいで葉瑠が襲われそうになったことも…。 全部……話した」 「どうして……」 「許せなかった。 葉瑠が苦しんでいるのに、何も知らずに葉瑠との未来を誓おうとするあいつが、どうしても許せなかったんだ…」 拳を作った北原くんの手が小刻みに震えている。
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