第十二章 ドラゴンの爪が切り裂いたもの(前)

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 壁のスクリーンには施設内外の映像がいくつも映し出されている。そのスクリーンの空白部分の一部が光って点滅すると古代のクラシック音楽が鳴り始めた。その点滅している光の部分を、全身を黒いフードと衣で包んだ男が指で触れると音が鳴り止んでその場所に映像が映し出された。そこにはリュウネクスト教団の法衣を着た男が映っていた。  「エリア5の大司教よ。近頃たくさんのモンスターがやられているようだな。何があったのだ?」  大司教と呼ばれた男が言った。  「セブンハマーの時魔導士が広く護衛を募ったようです。各地から猛者が集まり手柄を挙げようとモンスター狩りが始まったようです。そのため今はほとんどのモンスターを撤退させて施設の周囲を固めております。」  「ほう。また時魔導士の仕業か。一度痛い目に合わせなければならんな。この前エリア5で採掘された鉱石によって新たなモンスターが製造された。それをそちらに送ろう。そのモンスターを乗りこなす兵も同行させる。時魔導士の命を絶つ必要はないが街へ攻め込み脅威を与え権威を失墜させるのだ。」  エリア5の大司教がそれに答えた。  「お言葉ですが、セブンハマーには強力な結界が張り巡らされておりモンスターの侵入が困難であります。教団の者が忍び込んで装置を破壊するのにも一筋縄ではいかないでしょう。かくいう私も魔物使い。結界のため市街地では力を発揮できませぬ。」  法衣を着た男が一笑に付して言った。  「お主は手出し無用だ。大司教は施設を守っておれ。ドラゴンと騎士が攻め入る。あとは減ってしまったモンスターを充当しておく。これらで十分である。先日の報告会で言っていた調査団も派遣するので魔物使いとして協力を惜しまぬように。」  大司教は「承知しました。」と答えた。法衣の男が話を続ける。  「ところで鉱石を採掘していたモンスターもやられてしまったようだが、今後も鉱石は採れそうか?」  「元々廃鉱となっている場所であれだけ採れただけでも奇跡のようなものです。最近はずっと空っぽの状態が続いていたみたいですしね。おそらくあの辺の山賊にでもちっぽけな石をしまい込むところを見られて襲われてしまったんでしょう。代わりを送らなくても大丈夫だと思います。」  「そうか。では引き続き任務にあたってくれ。今日はこの辺で。」  スクリーンから法衣を着た男が映っていた画面が消えた。
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