0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おお、これで出かけるとき誰か留守番しなくてもいいね。そうそう。鍵がないからどうしようかって今ゾーイと話してたところ。」
するとゾーイがニヤニヤしながら言った。
「今夜は大人の盛り場にでも行ってみないか?美人の踊り子が華麗に舞うのが見られるようなところ。」
「踊りなら見に行くよ。森に帰った時、母さんへの土産話になるからね。」ボブが言った。
「そういえばボブのお母さんはキヨメガワの酒場で踊り子をしていたんだもんな。でも俺が見たいのはもっといやらしい感じのだぞ。」ゾーイが言った。
その後も三人で他愛のない話をしているとまた玄関にドタドタと兵士が走って来た。兵士の表情は疲労でやつれたように見える。兵士が言った。
「ハヤトという者はこの中におるか。ぜぇぜぇ。お、君か。ハヤトとその仲間達は城へ来るように。カメリア様がお呼びである。ぜぇぜぇ。」
ハヤト達は兵士に急かされるように身支度を整えると鍵を施錠して家を出た。外は夕暮れから夜になろうとしていた。兵士はわざと遠回りして道を選んでいるようだった。人通りの少ない道を渡り歩き城の入り口とは反対方向の裏口に通された。城の中を案内されている途中で宿主と出会った。
「やあ、こんなところで三人揃ってどうしたんだい?そうかカメリア様がお呼びなのか。わしは用が済んだから家に帰るところだ。鍵はかけてくれたよな?そうか良かった。家でゆっくり話そうかと思ってたんだが用事がありそうだし今少し話してもいいかな?」
宿主はハヤトに向かって話かけた。宿主とハヤトが横目でチラッと兵士の様子を見ると少しだけならという感じでしぶしぶと頷いた。
「君たちも良く聞いてくれ。あの鉱石はいったん市の予算で買い取られることになった。具体的な金額はまだわからぬが結構なものになるだろう。きっとカメリア様の護衛よりも莫大に高い報酬だ。それをわしの息子やカメリア様の父君が営む規模の大きい魔法石の精製所へ海を越えて運ぶ予定になっている。」
宿主はハヤトら三人と顔を寄せ合い小声で言った。
「僕は報酬なんていりません。離れを借りることができてとても助かっています。全部もらって構いませんよ。」ハヤトが言った。
「僕も同じ意見です。」ボブが言った。
最初のコメントを投稿しよう!