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「いやせっかくなんだからこれはもらっておこうぜ。ハヤトとボブの分も俺が預かっておきます。こいつら欲が無さ過ぎるんで。御主人も宿屋を立派なホテルに改築できますよきっと。あれだけの鉱石なんだから。」
商売人の子ゾーイは素直に分け前を主張した。
「うんうん。わしも細々と宿屋を営んでいけたらそれでいいんじゃ。むしろ若いお主らにくれてあげたいくらいじゃが、それはあとからでもゆっくり話そうか。それじゃわしはそろそろ帰ろうかな。」宿主が言った。
「ちょっと待って。セバスチャンさんも一緒に行きませんか?」
ハヤトが言った。それを聞いた兵士が面倒臭そうな顔をしていたが、ハヤトが懇願すると仕方なしに許可を得るため先回りして城の中を駆けて行った。その後ろを四人は様子を窺いながらゆっくりと歩く。
「せっかくお声がかかったというのに良いのか?こんな老いぼれを連れて行こうだなんて。」宿主が言った。
「使いの者は仲間も一緒にって言ってたから良いのかなと思って。セバスチャンさんを仲間というのはおこがましいけどお世話になっているしね。」ハヤトが言った。ゾーイとボブも快く頷いている。
兵士が走って四人の前に戻って来て言った。
「大丈夫なようです。会食を準備していた料理長は先代のゾーイ様がお出かけになったことを知らずに一人分多く作ってしまったとのこと。カメリア様の方でも先日の手紙を書いた者として知っており許可が降りたそうだ。」
四人は喜んで兵士の後を付いて行った。少し経って立派な扉の前にたどり着いた。兵士が言った。
「私が案内するのはここまでです。今日一日何度もお会いすることになりましたがそれもこれで終わりです。それではどうぞ、こちらへ。」
兵士が扉を開けると四人は部屋の中へ入っていった。それを見届けると兵士は慎重に音がしないようにゆっくりと扉を閉めて帰って行った。
食堂の中は豪勢な装飾品がさりげなく飾られていた。天井にはシャンデリアが備え付けられており長いテーブルにも蝋燭の炎が優雅に揺れていた。実質的なこの街の貴族や王族のような地位に相応しく、それでいて嫌みにならないようシンプルな工夫が施されている。
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