第十三章 ドラゴンの爪が切り裂いたもの(後)

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 そのテーブルの一番奥の席にはカメリアが、その隣にはシーラの姿があった。カメリアはいつもの白い魔法使いのローブを着ている。一方シーラは胸の谷間が見える大胆な赤いドレスに身を包んでいた。ゾーイの目はシーラの胸元に釘付けになっている。  「ようこそお越し頂きました。街の方には馴れましたか?今日の料理はこの辺りで採れた地元の食材だけを使用しているそうです。お口に合うかどうかわかりませんがお召し上がり下さい。」カメリアが言った。  四人は席に着くとセブンハマーの近海で獲れた豪勢な海の幸や太陽の豊かな恵みが育んだ色とりどりの野菜料理などが振る舞われた。  ハヤトやボブがテーブルマナーがわからず困っているとゾーイや宿主がそれとなく見本を見せた。カメリアには野菜料理だけが運ばれていた。  それぞれが一人ずつ簡単な挨拶をすると、どこからともなく会話が弾んで終始なごやかな雰囲気で時間が流れていった。宿主の息子がカメリア達の父親が運営する魔法石の精製所で働いていることや、ここぞとばかりにゾーイという名が母親ということでシーラに覚えてもらおうと必死になるゾーイの姿や、手を洗うためのボウルの水を間違えて飲んだボブに、それを笑ったハヤトが料理に付けるための液状のタレをスープと間違えて飲み干すなど、様々な出来事の後で会食が終わりを迎えようとしていた。カメリアが言った。  「普段聞けないような面白い話が聞けて楽しかったわ。ハヤトもみんなもまだセブンハマーにいるようだからまた機会があれば誘いますね。ではそろそろ…。」  その時、天井の方からガーンという大きな雷鳴にも似たような音が轟いた。建物全体が天井から下の方へと震えた。時間をおいてまたガーンと今度は城の天井を越えて街の上空の方から響いてくるのが鮮明に聞こえた。次第に音の間隔が短くなりガンガンゴオゴオと鳴り響くとそのあとにバラバラと何かが崩れ落ちる音も聞こえ始めた。  「一体何?」カメリアが言った。  「これは…結界が破られたかな。こんなことは初めてだが。」  不安そうな表情で宿主が言った。  「カメリア様、大変です。上空から飛翔するモンスターによって結界が破壊されました。街の周りを大量のモンスターが取り囲んでおり今にも入って来そうだとのことです!」  さっき食堂まで案内してくれた兵士が入って来て、青ざめた顔をして言った。
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