第十三章 ドラゴンの爪が切り裂いたもの(後)

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 「シーラは安全なところに避難して。私は現場を確認して来ます。」  カメリアが言うとハヤト達もそれに追随することを伝えた。食堂に結界の研究員であるブライトも駆け付けて来て言った。  「セバスチャン殿。ここへいると聞いて取り急ぎ参りました。既にあの鉱石と同等のものが教団に渡っていたようですね。今、街の職人に精製してもらった魔法石ができたところです。試作品に過ぎませんがこれを使ってなんとか対策を考えましょう。研究室までお越し下さい。」  宿主はハヤトらを激励するとブライトと共にその場を去って行った。シーラは兵士に連れられて避難場所へと向かった。  ハヤト達はカメリアの後を付いて一緒に走り始めた。  城の外へ出るとドーム型に張り巡らされていた無色透明な結界が上空の方でひび割れることで歪みが生じ、大きな穴が空いているのが見えた。  上空を飛行している緑色のモンスターが街の四方八方へ飛び回り、街の周囲を取り囲んでいるモンスター達を招き入れるために結界を爪で切り裂いている。  街の中は警告の鐘を打ち鳴らしている音が継続的に鳴り響き逃げ惑う人々の叫びや平常心を失い何かを言い争っている怒号が飛び交っていた。中にはモンスターに立ち向かう気で構えている各地から集った猛者たちの姿も見受けられた。  「先を急ぐにしても何からしていいのかわからないわ。」  カメリアは思わず弱気な独り言を言ったが態度は極めて冷静なままで、兵隊長を見つけると人々の避難と城の防衛、モンスターの討伐などに分けて出動するように指示を出した。結界の最高責任者とされる結界師の男に対しては「結界を張り直すことは可能なの?」と訊ねていた。結界師の男はこの街の結界は百人以上の結界師の複雑な技術と能力の絡み合いで成り立っていると説明し、装置を取り替えれば可能だがそれは大規模の交換になるため時間もかかり今の状況には対処できないという旨の見解を示した。それを聞いたカメリアは即断で結界の張り直しを取りやめて研究室にいるブライトやセバスチャンとともに街の結界師たちを結集させ解決策を練るように指示を出した。
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