第十三章 ドラゴンの爪が切り裂いたもの(後)

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 その間にも街の結界のあちこちが破壊されてその隙間からモンスターが大挙して押し寄せている。カメリアは城を出て目の前のモンスターと対峙する。ハヤト達が後を追うが間に合いそうにはない。カメリアはたった一人で複数の巨体のモンスターを相手にしようとしている。次の瞬間、モンスターたちはたくさんの光の矢に射抜かれて致命傷を負い姿を消した。カメリアは弓矢を持っていないが射抜いた後の姿勢で立ち止まっていた。カメリアは遅れて駆け付けたハヤト達に空中を指差しながら言った。  「このくらいのモンスターなら何匹いても相手にならないわ。問題はあの結界を壊すモンスターね。」  カメリアの指先には暗闇の空を素早く飛び駆けるドラゴンの姿があった。ドラゴンは一通りの役割を果たしたのか空中で停止した。  街はモンスターの破壊行為によって火の手が上がり、それが宙に留まっているドラゴンを赤く照らしている。  カメリアは次々と押し寄せるモンスターをその刹那刹那に倒していく。ハヤト達も負けじとモンスターと向き合った。そこにはハヤトの集落を度々襲ってくる巨人のモンスターと同じ型のが三匹いた。ハヤトはいつも長老に戦うのを止められていたため気持ちがウズウズとして軽い興奮を覚えた。  ゾーイが氷の魔法を唱えるとハヤトはそれを魔法剣に宿して鋭利さが増した剣先で一太刀振るった。モンスターの腕が切断されて既に戦意を喪失する程の痛手を与えたところにゾーイが雷の魔法でとどめを刺した。自動で身体が修復されないタイプのモンスターは姿を消した。ボブはその間ハヤトやゾーイの様子を見ながらも逃げ惑い怪我をしている市民など傷を癒していた。  ハヤトとゾーイはその勢いのまま二匹目、三匹目と倒して行くと、新たに小さなモンスターが向かってくる。それはジェリースライムのアマモだった。どうにかして網目の細かい小屋から抜け出して来たようだ。アマモの身体いっぱいにくぐってきた細かな網目の模様が広がっているのが透き通って見えた。ボブが安心した様子で出迎える。  ハヤトは集落を襲ってくる巨人と同じ型のモンスター3体を同時に相手にして勝利したことに心の底から自信が漲ってくるのを感じていた。周囲のモンスターを倒し一時的に手が空いたゾーイが空中のドラゴンを見上げていると何かを発見して言った。  「あのモンスターの背中に誰か乗ってるみたいだぞ。」
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