第十三章 ドラゴンの爪が切り裂いたもの(後)

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 カメリアもハヤトもボブも暗闇に目を凝らして見てみるとドラゴンの背中に伏せるような姿勢で掴まっていた槍兵の男が立ち上がった。空中を停止した状態を続けてはいるが不安定に揺れているドラゴンの背中の上で右手に携えた槍で上手くバランスを取り続けている。その槍兵の方から声が聞こえてくる。その声が拡声器を通しているかのように街中に響き渡った。  「あ、あ、あー。うん!これくらいでいいかな。時魔導士を支持する愚かな民よ。我々リュウネクスト教団はこの程度の結界はいとも簡単に打ち破ることができる。もはや結界など無意味である。総司教リュウ四世様を信じぬ者は地獄を見ることになる。時魔導士カメリアの護衛の為にわざわざ遠方より訪れた者たちよ。今もなぜ戦う?時魔導士は街の利益しか考えておらず護衛を決めるつもりはない。その若き時魔導士の浅はかな謀略を疑え!未だに護衛を決める気配はなく、手柄を挙げても見返りはない。その力、その忍耐を我々教団のために使ってくれるのならば我々にはそれを拒む理由はに。今は対立していてもその気にさえなってくれれば教団はいつでも手を差し伸べる。その慈愛の念こそがリュウネクスト教団の本質である。以上。」  ドラゴンの背中に乗っている兵士が槍を高く掲げると街中のモンスターがそれに応えるように雄叫びをあげた。街は異様な声音と恐怖に包まれた。その叫び声が収まると人々の間から時魔導士に対する不満の声があちらこちらから上がり始めた。逃げ惑う市民の一人が言った。  「もうこんな街では住めないよ。安心して暮らすには教団に入るしかない。」  鎧姿の男が言った。  「戦っても無駄だよ。護衛のためにわざわざ来たのに馬鹿らしくなってくるよ。帰ろう。」  しかしあからさまに不満を露にする者たちは身綺麗なままだった。逃げ惑っているようでいて場所を変えながら不安を煽ったり、戦ってもいないのに戦闘をやめさせようとしているのは教団が送り込んだ工作員だ。それでも一定の効果があり教団に入る意志を固める者や戦うのをやめてその場から立ち去る護衛の志願者が少なからずいた。
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