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自我が目覚めた時、俺は温かな世界の中にいた。騒がしい周囲の物音を気にせず、ただ与えられる優しさに浸っていたのである。
そして本能の赴くままに己の身体を動かしていたのだが、それはある日突然判明する。
─俺、猫じゃん。
まだ薄ボンヤリとしか視界が確立されていなかったが、確かに身体を被うフワフワな毛と、何より目の前にデーンと横たわる温かな存在──母親の見てくれが、その認識を覆してはくれなかった。
勿論、決して嫌な訳じゃない。そもそも生き物は好きだったし、フワフワは最高だ。
問題はそこではない。
俺、俺自身である。正確に言えば記憶だな。
そう、何故か俺には前世の記憶があるのだ。しかも、人間だったという記憶。
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