第一章

3/13

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
彼の死から9年…。 未だに信じられない。信じる気になれない。 あのときアイリを行かせなければ。 アイリと一緒に行っていれば。 そう思う度に、拳に力が入った。 それでも命日には必ず墓参りに向かった。どうしても仕事が休めなくても、後日向かい墓前で手を合わせた。アイリが好きだった木の実をたくさん供えてやった。どうせカラスが盗って食べるんだろうが、それでもアイリが喜んでいるような気がして。 今日はアイリの命日。 アイリのお気に入りの木の実を買って、袋に入れて綺麗にラッピングして、気休めにもならないが色紙で折った鶴を一羽、添えてやる。 いつもそうしていた。今日もそうするために、仕事を休んでスーパーへ買い物に行く途中。 たまの休日とは言えこの日は毎年気が重い。アイリの死を認めなければいけないからだ。 スーパーでいつもの木の実を買った後、店を出て歩いていた。 「リンくん…?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加