第一章

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振り向くと、中年の男性が立っていた。それはよく知っている顔。 「…ツバサさん。」 「やっぱり、リンくんか。」 この男性、ツバサには、昔はとても世話になったが、昔に比べると会う機会も随分と減った。 「リンくん、と呼ぶのも久し振りだなぁ。最近じゃ先生と呼んでばかりだよ。」 「そんな。俺が先生と呼びたいくらいです。ツバサさんには本当にお世話になって、色んな事を教えてもらったんですから。」 リンが勤めている病院に、最近はツバサは患者として会いに来る。 「まぁそう言うな。ヨクレとは連絡取ってないのか?」 「…ヨクレとは……。」 ヨクレ…。 それはツバサの一人娘で、リンとアイリの親友。いつも3人で一緒だった。高校卒業後に遠い国へ留学してから会っていないが、彼女に会いたい気持ちは今でも変わらない。 リンは保育園で出逢ってから、ずっとヨクレに片想いし続けているから。 しかし、留学先にリンとアイリを呼ぼうと連絡してきた彼女。 アイリは行くと言ってはしゃいでいたが、リンは医大に通っていて時間も作れず、アイリと一緒には行けなかった。 そして間もなくして、アイリが死んだとツバサから聞いた。 しかもアイリが死ぬその前日、ヨクレは妊娠が発覚して急遽結婚することになったらしい。 アイリとヨクレを、両方同時に失う事になった。
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