0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
振り向くと、中年の男性が立っていた。それはよく知っている顔。
「…ツバサさん。」
「やっぱり、リンくんか。」
この男性、ツバサには、昔はとても世話になったが、昔に比べると会う機会も随分と減った。
「リンくん、と呼ぶのも久し振りだなぁ。最近じゃ先生と呼んでばかりだよ。」
「そんな。俺が先生と呼びたいくらいです。ツバサさんには本当にお世話になって、色んな事を教えてもらったんですから。」
リンが勤めている病院に、最近はツバサは患者として会いに来る。
「まぁそう言うな。ヨクレとは連絡取ってないのか?」
「…ヨクレとは……。」
ヨクレ…。
それはツバサの一人娘で、リンとアイリの親友。いつも3人で一緒だった。高校卒業後に遠い国へ留学してから会っていないが、彼女に会いたい気持ちは今でも変わらない。
リンは保育園で出逢ってから、ずっとヨクレに片想いし続けているから。
しかし、留学先にリンとアイリを呼ぼうと連絡してきた彼女。
アイリは行くと言ってはしゃいでいたが、リンは医大に通っていて時間も作れず、アイリと一緒には行けなかった。
そして間もなくして、アイリが死んだとツバサから聞いた。
しかもアイリが死ぬその前日、ヨクレは妊娠が発覚して急遽結婚することになったらしい。
アイリとヨクレを、両方同時に失う事になった。
最初のコメントを投稿しよう!