―悪い女―

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「もう、戻って来ないつもりでいる?」 トーンを落とした声が耳元で、甘ったるく、ささやく。 「もちろん。何言ってるの?当たり前だよね。 私、他の人の奥さんになるんだよ? 明日、神様の前で、永遠の愛を誓うの」 決意してたなら、どうしてもっと早く、きっぱり区切りをつけなかったのか… 自分の心に問いかけてみても、答えなんて…… 「本当に?アイツ一人のものになるの?」 「そうだよ。決めたの。…私、間違ってないでしょ!」 夫に隠れて、浮気するような不倫妻になんて、ならないんだ。 たとえ、自分の分身のような存在が、こんなふうな、ひどく悪い男だったとしても‥ 「オレの手から離れて? ずっと…ガキの頃から一緒だったのに」 「………………………」 何度もそうしようと思って、決別できなかったのには、理由がある。 この期におよんで、私を離したくないというのは、この男の、わがままだ。 この期におよんで、離れがたいと思うのは……私の……
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