―悪い男―

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二人が物心ついた頃から…お互いを、別の人格だと、異性だと意識し始めた頃には、もう… 好きだっていう感情が‥芽生えてた。 あぁ、わかんない。 好きだと思う以前に、かけがえのない、離れがたい存在だと、認識しあってたかもしれない。 恋だとか、愛だとか…そんなの知るよりも、もっとずっと、前から……。 視線を絡め合ったりしなくても、そばに来れば、気配を感じたし、言葉を交わさなくても、何を考えてるか、だいたい、わかってた。 だから長い間、他の子なんて目に入ったことなくて……。 中学の頃、人生で初めて、先輩から告白された時も、一番に思い浮かんだのは、近所のいたずら好きの、弟みたいな存在の、その顔。 べつに嫌いなタイプの先輩じゃなかったし、他人に好意を持たれてるという感覚は、素直に嬉しかったけれど、何となく相手との距離が遠すぎるような気がして、違和感しか湧かなかった。 他人じゃなくて、もっと身近な人間じゃないと、自分の中身や考え方を知られるの…恥ずかしいよな、としか思えなかった。
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