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ここは、とある喫茶店。
「今日こそは、好きな人に告白するぞ!」と、意気込んでいた男が一人やって来た。
彼の名は……。まあ、どうでもいい。女の人の名前はキャンディーと言った。まるでなめ続けたら小さくなりそうな名前である。というより、そもそも名前をなめる人はいないだろう。それで、この喫茶店。室内に茶色の四角いテーブルと椅子が10セット置かれ、室外に白くて丸いテーブルと白い椅子が6セットあった。そして小さな庭がある。なかなかお洒落なお店だった。
「こんにちは。約束より10分早く来たが、君の方が早かったね」
「……」
「そんなにもじもじしないでそこへ座って」
「……」
「何を頼もうか。そうだ。ミルクティーがいいね。すみません。ミルクティーを2つお願いします」
「かしこまりました」
「そうだ。今度海へ行こうか。釣りがいいかな。君は魚が好きだからね」
「……」
「お待たせしました。お客様。ミルクティーですが二つともお客さまのテーブルの上で宜しいですか?」
「いや。一つはその方へ」
「えっと。どの猫でしょうか? 猫が10匹とお客様以外誰もいませんからね」
「はっ? そ、そんなことはない。ここに美しい女性が座ってるではないか……。あれ? 消えた」
「キャンディーですね。また現れましたか。あれは男好きな猫の亡霊ですよ」
店長は笑った。男は唖然とした。
店の小さな庭はそよ風に身を任せた猫じゃらしが、何食わぬ顔で揺れていた。
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