オレの悩ましい兄貴

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 もふっとした鼻ざわりに、むわんとした匂い。  夢の世界から強制送還されたオレは、いつもの匂いに目を覚ます。  ぐっ!  見覚え、嗅ぎ覚えのあるそれに俺は反対側に寝返りをうつという冷静な対処をとる。  が…。  トテトテトテ…ぼふん!  うっ!  奴は、例のごとく回り込みまったく同じ体勢で座りオレの顔面にそれを突き付ける!  むわん。  臭い。  そして、近い!  オレは、目を開けた。  結果なんてわかりきっていたのに、オレの2.0の視力は至近距離でそれをクリアにとらえる!  それは、ぴんと伸ばされたカギしっぽの付け根にひくつく 『アレ』。  「毎度、毎度、なんのつもりだ…?」  湧き上がる怒りを抑えてそう聞いてしっぽをつまんでも、奴はふりっと尻尾を振ってオレの指を逃れてひくひくにじり寄ってくる!  何年も続くそれは、たまに実家に帰ったときに行われる『朝の儀式』だ。  奴の名前は『ハヤタ』。  オレの生まれるより先にこの家にいて、兄弟のように育った…白黒のハチわれカギしっぽがチャームポイントなにゃんこ♂だ。
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