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夏祭り参加決定で、ママが忙しくなった。
刺繍を売りさばいていた頃に知り合ったテーラーやデザイナーのところに行っているらしい。
とりあえず夏用着物を新調することになった。
宴席で着る服は宮家が用意することになっているので、その前後に着る服になる。
休みの日に、ママの古い友人がいくつか生地を持ってきて、選ぶことになった。
初めて会ったデザイナーは、有名なつがいの片割れと、会えたことを喜んでいた。
「これから、様々なイベントでのお召し物がその時代時代の流行になっていくんですよ」
なるほど、有名人が流行を作っていくことになるのはどこも同じ。
ものすごい美人という噂の皇妃にお願いしたいが、皇妃不在の今、ぼちぼちの自分に回ってくる。
親近感がある可愛さ、というらしい。
ち。
荒んではいけない。笑顔。笑顔。
見せてくれた生地は、赤、ピンク、オレンジ。
なんだか、幼い。
他にないか、彼女の他の荷物も見せてもらう。
「これはねえ、他のお客様のために作ったんだけど」
ため息をつく。
20代後半の女性のために作られた生地は、深い紺と緑の間の微妙な色に縦に縞が入り、大きな百合の花が華やかさを出している。
「もっと可愛いのがいいっておっしゃって」
思い出して、ふふふ、と笑う。
「これがいいなあ」
気に入っちゃった。
「あら、まあ、いいんじゃない?」
ママも気に入った様子。
この着物なら、小物は、と話が進む。
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