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5時の終業前に、ミヤが研究室に来た。
リーナは、ちょうどツガモに説明をしている。ツガモがキイズの領地全部を担当している。キイズの領地の荒れ具合が、ツガモが持ってくる案件によって、より際立つ。自分があんなに時間をかけて、細かく手間をかけたキイズの土地が荒れてる、とわかると、どうしても後回しにすることができなかった。
いつの間にかミヤが隣にいて、ツガモと同様に説明を聞いている。
各地でそれぞれ調査してきたデータを元にそろばんで一つずつ算出し、今年、来年、3年後を見据える。
「…出てきた数字に、3.25をかけて」
「甲、乙、乙」
計算結果と最終結果を記入して、右上に自分のサインをする。完成。
「ここの数字の出し方って」
ツガモが迷子になったところに戻って、説明。
「また、わかんなかったら、聞いて」
席に帰っていくツガモに声をかける。
ミヤが今完成したばかりの案件を見る。
リーナのサインは、キイズ内で扱われる書類においてかなり信用が高い。実際、御所で管理されているキイズの書類に彼女のサインが残っている。
ここ、数ヶ月で彼女のサインを新たに目にしたものもいるだろう。
キイズの姫は、もう、行方不明ではない。
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