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南衣は鳥居を抜けて、キイズ家の本宅の庭へ。
庭から玄関に入ると、ママが刺繍の手を休めて、振り返る。
「お帰り~」
刺繍の腕はプロ級で、売ればかなりの値段になるが、今は親友の嫁ぎ先の将城と将宮、自分の住まいのキイズ家に少し残っているだけで、売り物を作っているわけではない。
幼い自分が使って汚して捨ててしまったものもあるだろう。
今作っているものは、将来自分が身につけるための飾りのようなもので、ワンピースになるかどうかもわからない。
南衣(みない)とリーナはどちらも同じ自分だけど、ママの顔を見ると、リーナの方がしっくりくる。
リーナ、と言う名前は、ママのママ、リーナにとって祖母にあたる女性と同じ名前だ。
一度も会ったことはなく、ママが子供の頃に亡くなったと聞いている。
祖母はとても強い女性だったが、その祖母が亡くなると、仙族の住む国に住めなくなり、追い出されるようにキイズに移って来たという。
そこで親友のカスリネカシリアに会い、意気投合して、各地を旅したという。最終的には将宮まで行って満足し、皇都まで戻ってきたそうだ。
今はそれぞれ将城とキイズの本宅でそれぞれの伴侶を得て暮らしている。
パパは行方不明だけど。
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