海の見える街

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海の見える人のいない街 古く赤錆びた線路をたった一人のあの子と歩く 幼い頃から病気という呪いにかけられていた私たちは、本当の幸せの意味さえも知る術はなかった。 ただ、二人で入られる時間はとても輝かしいもので其の中で湧き出る感情を幸せと名前をつけた。本当にただそれだけの話。 あの子が笑えば私が笑う。 私が笑えばあの子が笑う。 握られた小さな手の温もりが消えないように、消さないように、握りしめる。 「ほら、朝焼け!」 綺麗な光に憧れるあの子は、そんな些細のことさえでも頬を緩めてしまう。 其姿が愛しくて。怖くなる。 幸せを知ってしまった人間は次に失うことを恐れる。 どこの世界でも、この世でもあの世でも、失われない幸せは存在しないのだ。 この目の前にある確かなものが消えてしまったらどうしよう。 そう考えると酷く………怖くなった
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