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「どうして?」
「だってさ、あんな若造の俺だったら、
今みたいに、美沙ちゃんの素敵さをちゃんと感じることも
理解もできなかったと思うもん。
なんていうか、ただ単に貪って、達成感だけを味わっただろうなってさ」
愛おしそうに、短い私の髪を撫でながら天井に真っ直ぐ視線を向ける彼は、
ぼんやりとした月明かりのほの暗い中で、どこか恋する少年のように
満ち足りたものを浮かべる。
「確かに、あの頃よりも年は取ったよ。
だけど、お互い色々あったほどに時間と経験を重ねたからこそ、
俺は、今の幸福感を味わえてる。
ホントに想像してたよりも、遥かに、遥かに幸せなんだ、今」
しかし、満足そうに言う彼に
私は、心の中で「でも、女は違うわ」と小さく言った。
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