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本当なら、ちゃんとここに戻ってきた事をシオくんに伝えたい。
引っ越してきたその日、シオくんの家を含めご近所さんの家にご挨拶に伺った。
けれど、シオくんの家だけまだご挨拶がちゃんとできていない。
昔からシオくんの家は共働きだったけれど、引っ越してきたその日の昼間にインターホンを鳴らしても出られなかったし、次の日の朝や夕方、シオくんが勉強しているのをカーテン越しに確認してからインターホンを鳴らしても、誰も出てこなかった。
年頃のシオくん一人で家にいるなら、インターホンが鳴っても出ないことは当たり前かもしれない。
シオくんのお父さんがお母さんがいるかもしれない時間に…と思って、今日も朝と夕方にインターホンを鳴らしてみたけれど誰も出なかった。
これだけインターホンを鳴らして、隣の家のわたしの部屋にカーテンもついていたら、わたしが戻ってきたってシオくんも分かるんじゃないか?なんて期待してみたが、シオくんの様子が変わることは無かった。
…なんだか、シオくんとまた会えることを期待していたのはわたしだけなのかな、と思い切なくなる。
シオくんにとったらわたしは小学生の頃ただ隣に住んでいた子、くらいの思い出しかないのかもしれない。
なんだかそう考えると、窓越しにシオくんを呼んで久しぶりー!なんて声をかける勇気も出ない。
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