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彼女の存在に気がついた私は高速で走り抜ける彼らの目を掻い潜り、彼女を抱き上げ、日陰に移動する。
私の手の上でわずかに動く鼓動。
そして、未だ暖かいその体温を感じながら私は彼女の強い光の灯った瞳を見つめる。
虚ろで……、誰かに助けを求めるような弱々しさの中に確かに灯っている業火の如き意思。
私は彼女をそっと草の絨毯の上に寝かせ、彼女の頭を撫でる。
すると、彼女は最後の力を振り絞るかのように首を持ち上げ、口を開いた。
「貴女は……誰ですか?助けていただき、ありがとうございます」
私の耳にはそう聞こえた。
「でも、君はもう長くないでしょ?」
「……はい。口惜しい限りではございますが、もうこの体に力は残っておりません」
彼女は首を地面に下ろし、楽な姿勢のまま続ける。
「あぁ、あぁ、どこのどなたかは存じませぬが、本当にありがとうございます。あのままあの場に居続ければ、もう既にこの世にはいなくなっていたことでしょう」
私は彼女の頭を撫でる手を止め、彼女の頬に手を添える。
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