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「あぁ……暖かい。なんて暖かいお手をお持ちなのだろうか。最後にこんな風に誰かの温もりを感じることができるなんて、なんて私は幸せ者なんだろう」
「御免ね。完全には回復しないんだ。それでも多少の延命くらいは出来る」
「そんな謝らないでください。こんな死にかけの私に情けをかけて下さり、感謝してもしきれません」
そんな彼女の言葉に私は顔を綻ばせ、頬を優しく指で撫でる。
「本当に申し訳ありません。恩を返そうにも私にはその時間がない」
それはわかってる。
これだけ盛大に壊れているのだ。
彼女の時計が未だに時を刻んでいること自体が奇跡といってもいい。
「ねぇ、最後に言いたいことはある?恨みでも嘆きでも願いでもなんでも聞いてあげるよ?」
彼女は目を閉じ、私の言葉を聞いてしばし考える。
そして、目は閉じたまま口だけを開き
「不躾ながら私たちの怨念を形にして頂きたい」
「どういうこと?」
それは願いではない。
私への願いを捧げる行為とは当てはまらないため、私は優しく聞き返す。
すると、彼女はそのまま言葉を紡ぐ。
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