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「平気で我々を殺し、平気で我々から奪い、平気で我々を蹂躙する悪の権化」
その地獄の業火にも似た意思を私に向けて彼女は言葉を紡ぐ。
「“偽りの方”よ」
その言葉に私の体はピクッと反応する。
いつの世も彼女らのような存在は容易く私を見つけ出す。
だから、彼女らのようなものからは嫌われ、慕われ、畏れられ、敬われる。
そんな私の心中など気付きはしない彼女は精一杯、破れた肺を動かしながら声を出す。
「貴女様のお言葉に甘えさせてください。どんなものでも支払います。この死にかけた体にどれほどの価値があるかはわかりませんが、どうか私の願いを叶えていただきたい」
私は彼女の言葉により真剣に耳を傾ける。
「いいよ。言ってみて?」
「どうかお願い致します」
そこで彼女は再び吐血する。
そして、執念の隠った言葉を一生懸命に紡ぐ。
「どうか……あの者たちに……しゅ……く……せい……ぉ」
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