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そこで彼女の時計が止まる。
その瞳には悪魔をも退けるくらいの強い光を灯したまま、彼女は動かなくなる。
いずれ、その瞳の炎も消えてなくなるのだろう。
私は彼女の痛々しい姿を見つめながら彼女の願いに答える。
「ごめんね。死んでしまったら何も支払えないんだ。最後まで言い切る力が残っていれば君の中にある時計を奪って願いを叶えることができたのに」
身の丈を超えた願いを叶える時、私は願いを捧げた者からその者の時計を奪う。
誰もが平等に所持し、誰もが同じくして止めてしまう時計。
奪われればその者は時を進めることが出来なくなる不幸。
「大丈夫だよ。君の亡骸はちゃんと綺麗な場所に埋めてあげるから」
彼女の亡骸を抱き寄せ、私は道を行く。
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