3人が本棚に入れています
本棚に追加
夏休みになると母の実家へ遊びに行った。地主の農家で、井戸や納屋も健在する大きな一軒家だった。
「お腹空いたやろ?お昼食べや。」
つるつるつる。
長時間の車の移動で疲れた体に、冷たいそうめんが流れていくよう。
目の前には畑で採れたナスやさつまいもの天ぷらが山盛り。トマトやきゅうりのサラダもある。
大好物のさつまいもの天ぷらを箸に挟んだら、とても重たくてぷるぷる震えてしまい、口に運べず宙に箸が止まってた。
シャッ!!!!
突然、黒い影が右から左へ飛んだ。
ネコだ。
家の中でも納屋でも戸外でも飼っていたネコは数えきれないという。ネズミや虫を退治してくれる頼もしいハンターらしい。
でもね?
わたしのさつまいもの天ぷらまで取る?
驚いたあまり、ぐらぐらしてた歯がそうめんのつゆにポチャンと抜けたオチまで付いてる。
「ネコが天ぷら盗ったぁああ。」
泣き出したわたしに母はひとこと。
「口に入れへんから、くれると思たんちゃう?」
部屋の隅でむしゃむしゃ食べる野性的な姿に、かわいいだけじゃないんだと悟った夏休みの思い出。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!