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「何焼くの?」
目を輝かせたのはリコだ。
そうだな、と考える。簡単にパンケーキでも、と思ったのだけれど、寒いからバターケーキがいいかもしれない。焼き立てを熱いうちに食べれば、少しは元気が出そうだ。中に入れるのは、ハーブかナッツかドライフルーツか。前に作って保存しておいた豆と栗の甘煮もある。
自分、J、リコ、リタ、二階で寝ているコウモリのヴィー。そしてあの人……名前を聞くのを忘れた。とにかく六人分だ。二種類は作ったほうがいいだろう。一つは豆を入れて少しくどいくらいの甘さにして、一つはナッツとドライフルーツでさっぱり仕上げよう。
「また降るの?」
窓に近づいて外を見たリタがつぶやく。リコが笑った。雪を触ってみようという話になったらしく、双子はドアを開けて出ていった。
「寒くないかな」
ドアが閉まったあとで、ふとユーミンがつぶやく。蛇には毛皮がない。寒さには強かっただろうか。いや、昨日まで冬眠していたのだから――外で悲鳴が聞こえた。
「大丈夫?」
慌てて室内に戻ってきた二人に声をかける。振った首から水滴が跳ぶ。
「大丈夫じゃないわよ。塊をぶつけられたのよ!」
「ぶつけられた?」
一息ついたリタが笑う。
「ちょっとからかわれただけじゃないの」
「レディーにそんなことする? 失礼よ」
冷えちゃったと言いながら、ぷりぷりするリコが先導して、姉妹は階段を上って行った。
狭いががらんとした一階には、ユーミンだけが残った。
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