雪の朝

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手を温めながら、かまどに置いたヤカンが立てる湯気を見つめる。 まだ山で迎える越冬に慣れていない。薪はたくさんあるから大丈夫だろうが、食料は春まで持つだろうか。 保存食はたくさん用意してある。燻製肉、小麦粉、缶詰、お茶の葉、自家製のジャムにピクルス……。しかしもう少し残り少なくなってきたら、一度買い出しに行った方がいいかもしれない。ひと月ほど前に訪れた行商人のティッペが、雪が積もっている間は来ないと言っていたから。 逞しい中年女性であるティッペは、食料や日用品だけでなく「依頼」も持ってくる。戸の近くにあるミシンの脇のテーブルには、冬の間に仕上げなければならない縫い物がごっそり置かれていた。子供用のバッグ、ハンカチ、スカートにコート……生活を支える収入のもとだ。 引き受けたときには、もっと早くに終わるだろうと思っていた。いざ寒くなるとどうもおっくうで、日がな毛布にくるまって過ごす日もあった。この頃ではカレンダーを見ると気が重くなる。取りかからねば、と思いつつ足がそちらへ向かない。 粉末のミルクを濃いめに入れた紅茶をカップに注いで、リコとリタの前に置く。 「今日はやらなきゃね、あれ」 やんわりと釘を刺したのはリタだ。ユーミンは苦い思いを感じながら、ほっとした。ようやく取りかかるきっかけができた。
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