蘇る勤労

東京は燃えているか?

　新宿駅前で毒ガスが発生!多数の死傷者が出ている模様。雪の影響でダイヤも乱れている。
　俺は静岡県三島にある白虎隊のセーフハウスに来ていた｡外観は普通の民家だ。
「どうせなら、ビッグサイトあたりに仕掛けてくれればいいのに」
　佳苗が言った。炬燵で蜜柑をムキムキしている。
「新卒たちが入ってきたらウチらは終わりだよ」
　佳苗は臨時教師だ。
　俺も数年前に東電の下請けに派遣されていたが、新卒が入ると同時に切り捨てられた。
「そりゃあ、東京が不幸に包まれるのは嬉しいけどさ?通行人Aが死んだところで、生活は改善…………」
「うるさいな、ニュース聞こえないじゃん?」
「すみません、生まれてきてすみません」
「太宰かよ?人間失格かよ?」

　蜜柑、煎餅、緑茶…………しっかし寒いな?
　雪がなかなかやまねぇよ。
　栃木は糞みたいなところだ。
　茨城、栃木は最低賃金500円だ。
「よかったよな?もっと苦しめっての?」
　語尾が上がって悪かったな?東京に勤めていたとき散々バカにされたよ。
「雪男、あんたのせいでまた雪だよ!」
　おふくろが笑っている。
　そうそう、俺はユキオだから雪が降る。
　ゴミみたいな街だ。もっと毒が充満すりゃあいいのに!毒キノコを駅のトイレで燃やすなんて、何て素晴らしいアイデアの持ち主なんだろう?
　キノコだったら不振尋問されない。
　手に入りやすいし、扱いやすい。
「犯人様々だ?爆弾じゃなくってキノコってところがシュールでいいよね?」
　おふくろは下品にヒヒヒッ笑っている。
「キノコってわりかし高いよな?」
「松茸なんて最近食ってねぇよ?」　　
「言葉使い悪いな?」
「あんたがいつまでも派遣でいるからだろ?」

　ユキオは鎌倉にやって来た。
「すごい人だかりだね?」
　佳苗が言った。
「うん、そだね」
　タバコは精神分裂を引き起こすからやめた。
　昨日は佳苗とオセロで意気投合した。
　佳苗は対人恐怖症で輪に入ることが出来ないそうだ。とても、そんな風には見えないが。
　佳苗が臨時教師をやめて3年になる。
　去年の夏は沖縄に出掛けたが、毎日ブラブラしてる彼女にイライラして帰りの飛行機のなかでケンカした。
　小町通を歩いた。
　佳苗は回りなんか気にすることなくユキオと腕を組んだ。桐村はファインダーに2人の姿をおさめた。カシャッ!