第十九章 オアシスのほとりで

2/10
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 時系列はハヤトが大司教を撃破したところまで遡る。  広大な砂漠の中心ではいつからか気候が変化して猛烈な風と巨大な竜巻が巻き起こることが常態化している。この地域には砂漠を避けるように周辺に集落や街が形成されている。  教団も例外ではない。かつてこの一帯はエリア10と呼ばれていたが今は残さた施設の識別番号となっている。  そのエリア10の施設内では新たな建物が建造された。教団はリュウネクストの創設者リュウの能力を解き明かし再現することで復権を目指している。その「同調する」力を調査するための研究所である。  教団はモンスターと同調する能力を持つ魔物使いを集めて調査を開始する予定だがまだ具体的な運用は未決定である。その役割を担う職員は暫定的な処置で数も少ない。  夜になるとその暫定的な研究所の職員は全員住居へ帰る。監視しなければいけないものなどまだ研究所の中にはないという考えだ。  しかし研究所の中に一人だけつまらなさそうに残されている男の姿があった。彼は広い牢屋の中でこれといってすることもなく不満げで退屈そうにしている。その道化師風の格好は人前に出て楽しませることを職業にしている様子を窺わせる。 男はじっとしているのが苦手なのか時折立ち上がっては様々な奇妙のポーズを取ったり変な顔をしてみたりしている。ついには一人で話し始めた。  「えー、私が以前に世界中を股にかけまして巡業の旅に出てますと、ある街の人たちにここから先へは行かない方がいい、命が幾つあっても足りやしないんだからっていうんですね。そんなに僕にここにいてもらいたいの?人気者は辛いなーって言ったらどうやらそうではないらしい。この先には黒い……うわぁーーー!」  牢の中に突然白く光る靄があらわれて中から傷だらけの男とボロボロになったジェリースライムが飛び出してきた。男は話の途中でそれを目の当りにして思わず叫び声を挙げた。白いもやもやしたものは消えてなくなった。道化師の格好をした男はおそるおそる話しかけた。  「おいそこの君。急にこんな夜更けにどうしたんだい?怪我をしてるじゃないか。それにこれは仲間のモンスター。そうか君は魔物使いか。確かにここは魔物使いを研究するところらしい。なんで笑わせ師の俺がここに捕らえられているのかは超理不尽なんですけど。今後ルームメイトはこんな感じで突然増えていくのかな。嫌になっちゃうなー。」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!