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その時。
――流れてきたのは、
笛の音。
力なく閉じていた紗羽の瞼が開く。
高く、
低く。
澄んだ音色が豊かに響き渡る。
「……博雅」
晴明が顔を上げる。
「その手があったか」
音楽も、
光と同じくまた波動。
波はそれ自体が力だ。
だから人々は、
神に、
霊に、
祈りと共に音楽を捧げるのだ。
御簾を潜って入って来た春花が、
紗羽の身体を晴明から受け取る。
そっとその頭を胸に抱え込んだ。
「春花?」
紗羽がその小さな顔を見上げる。
春花の胸から伝わる優しい鼓動。
染み入ってくる笛の音。
身体の中の餓えが、
満たされていく。
こんなにも……暖かく。
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